翁先生の抵抗は見た目より、かなりソフトだった。
あったかいマシュマロが足の甲にふわっとのっかっている。そんな感じだった。
それでいて、やわらかくて力強さがあるのだ。
翁先生の手の平は、大きくて触れてみたらカワがとても薄くてポチャッとしていた。
そんな手の抵抗を受け、私はカカトを少し床に踏み込み、骨盤から背中まで、動きが気持ちよさにつられて出てくる感覚を味わい、ストンと脱力した。
これで膝ウラのこりはなくなっていた。
「今度はウツブセになってぇ」
と翁先生がいった。
私はうつぶせになった。
翁先生は膝を曲げて動診する。
「こっちとこっちでどっちが窮屈?」
と左右のカカトを尻につけようとする。
私は右のモモの前が突っ張る感じだったので
「右が窮屈ですぅ」
と言った。
翁先生は私の右足首を支えて
「これこうやってのばせぇ」
と私の足首を自分の方に引きながら、
「カカトでのばせぇ」
といって、つま先をそらしてくれた。
どうすればいいのかすぐにわかった。
膝を伸ばしてゆくと、ここでまたびっくりした。
翁先生の手が手ではないもののような感じなのだ。
支えられているところの足の感覚のことだ。
たぶん、手が足に触れている面があるとすると、その面全体に均等な圧力がかかっているかのような感覚だった。
これが、安定感を生む抵抗の極意3。
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