豆とトロロ

温古堂での翁先生の操法を解説つきで、極意5まで書いてきた。
こんなにも鮮やかに操法を表現しているものは他にはないと思う。

ましてや、まるさんのイラストつきときている。
(まだついてないか)
86才当時の話ではあるが翁先生を味わいたい人にとっては贅沢の極みである。

著者がこんなことを書いてしまっていいのだろうか。
そうでも思わないと後が続かないのだ。

   許せ!

 

 

さて、ものがたりをつづけよう。

私は左つま先上げ、右膝伸ばし、左カエル足を終え、仰向けになった。
翁先生はトコトコと私の頭の方にきて首のコリを確かめ、

   「ほーら、今度はイデグネエ」

とクリクリ首の後ろを押さえた。

「ぜんぜん痛くなくないですぅ」

とびっくり私。
翁先生は

   「そうなってんだがら、仕方ねえはなぁ、後はまあ自分でやれや」

と火鉢の指定席に向かった。
私もいい気分で火鉢のそばに座り

「先生、首は何にもしてないのに、治ってしまうんですねぇ」

と言った。

翁先生は

   「みーんなつながってんのさ」

と竹べらでお茶をまぜ、クイッとすすって茶碗を置き、大好きなミドリ豆の辛いやつをポリポリ食べてこういった

   「豆はうめぇなあ」

と。

私も一緒にカリポリし、

「これ、カライですねぇ」

などというと、カリカリ食べながら翁先生、

   「こんなの、さっぱりからぐネェ!」

と子供のような表情で少し怒った。

自分は辛いのだったら、どんなに辛くても平気なんだといった自慢顔であった。

 

 

翁先生の自慢話しには有名なのがもうひとつある。
よく目を輝かせて

   「オレなぁ、子供んときなぁ、トロロご飯十八杯食べたことあるんだ」

と、たくさん食べた自慢話であった。
これは、お客さんが来るたびに、何度となく教わったので、忘れられない話なのだ。

 

さて、次回は私と翁先生が反対になる。
翁先生と私である。
つまり、翁先生が患者の係りで私が先生の係りの操法のものがたりを書く予定である。

まだ一行も書いていないけど、おたのしみに。

  

前頁   HOME   目次   次頁

inserted by FC2 system