5.カワを感じる:かわの操体
カワの操体を一度味わうと、イメージを使って皮膚の感覚を呼び出し、姿勢の調整や自己治療に使う事が可能になります。
以下のエクササイズを、遊び気分でやってみて下さい。
感覚スケッチ
- 今感じている、「最も気になる からだの感覚」 を コトバで 記述(スケッチ)して行きます。
- 表現 は 『 叙述 』に限定します。好き嫌い、善い悪いなどの価値判断(評価)を入れないようにしてください。
- 慣れるまでは、誰かにガイド役を 引き受けてもらい、以下の質問を読み上げてもらいながら進めるといいでしょう。
- からだの 「どこ」に、それを 感じているか?
- その感覚の範囲は?
- 形は?
- 長さは?
- 幅は?
- 厚みは?
- 物に喩えると材質は何?
- 色は?
- 爪で弾くとどんな音がする?
- 舐めてみたらどんな味?噛んでみたら?
- このように、「感覚」を具体的に、はっきりと声に出して誰かに表現することによって、『観察』は勝手に緻密になって行きます。聞いてくれる人がいない場合は ラジオで実況中継を担当する記者になったつもりで、テープレコーダーのマイクに向かって説明してください。
- 語り始めた途端に、その「感覚」の位置が移動したり、大きさが変化したり、別の感覚に変わったりしていくこともよくありますが、そういう場合は「変化そのもの」を表現していきます。
- 一段落ついたら、深呼吸します。今やったことを 全部忘れるつもりで、吐く息とともに 全身の力を抜きます。
- はじめにあった感覚の 形や色が 「今はどのようであるか」を改めて確かめ、相手に伝えてください。
- 自分が 大嫌いなものや怖いものを見たとき ゾッとする と言いますが、この「ゾッ」という体感も カワ(皮膚)で感じています。
- 他人に非難の目で見られたり、いやみを言われたりしたときも 必ずといっていいほど、身体のどこかに いやな感じ が 生じています。
- 昔の自分の失敗を思い出したり、先行きに不安を感じたりするときも同じく感覚が生まれています。
- そういう場合も痛みに対してやったように感覚スケッチをしてみましょう。
感覚をつなぐ
物理的には カワ(皮膚)は全てつながっていますが、意識の中ではバラバラになっています。
ばらばらになっているカワの感覚を 意識の中で繋ぎなおしてみましょう。
自分の感じ取りやすい(足の先でも、頭のてっぺんでも、手でも)ところからはじめ、順々に 皮膚の感覚を追って行って、全身につながれば成功です。
足の指から順番につないで行く例を載せます。
- まず 両足の小指のカワ(皮膚)を意識し、感じ取るようにします。
- 次に 隣の指(薬指)のカワを感じ取ります。
- 小指と薬指の感覚をつないで ひとつにします。
- さらに中指を意識して 小指から中指までの三本の指を同時に感じるようにします。
- 感じがわかってきたら、そのまま どんどん継ぎ足していきます。
- こうやって順々に 足⇒胴体⇒頭⇒腕⇒手 と、感じる範囲を広げるように全身をつないで行きます。
- 途中に 痛みや痒みなどの感覚があるときは、それも感じ取り つないでいきます。
- 最後は一度に(同時に)全身を感覚するようにします。
ここに載せたやり方は 厳密にやる場合の例で もっと大雑把にやってもらっても結構です。感じ取っていく順序も やり易いようにして下さい。
人に手伝ってもらうときは、基本操法:ふたりで操体の 「ゆらしゆびもみ」を してもらい、終わった後の余韻を 全身で感じるようにします。
不快感覚をつなぐ
- 痛みや恐怖・不安感などの「不快な感覚」がある場合、その感覚(痛み)の範囲を感じ取って見てください。「だいたいこの辺り」というのではなく、その感覚(痛みなど)の正確な範囲を感じ取ってみてください。(感覚スケッチ)
- 痛みの範囲(輪郭)が はっきりしたら、その輪郭線の外側(周囲)の皮膚を感じ取ってみます。「なんともないところ」を感じるのは難しいように思うかもしれませんが、痛みの周囲の上下左右を意識しながら探してみると、感じとりやすいところがあります。多少、離れていてもかまいません。
- わからない時は 痛みの範囲の外側に 手を当てて、触れる感触や手の体温を感じ取るようにしてみてください。
- 痛みの外側に「感覚」を感じ取ることが出来たら、その二ヶ所の感覚 を、意識を使って繋いでみて下さい。(感覚をつなぐ)
二つの別々にある池をつないで、一つの大きな池にするようなイメージです。 - さらに それを、末端(手足の指先や頭や顔)まで引き伸ばして行きます。二つの池が繋がって出来た大きな池から 川が流れ出していくようなイメージです。
- どうしても通りにくいところがあれば そこに手のひらを当てて温めて 通り始めるのを待つのもいいし、通りにくい部分を迂回して 感じやすいところを探りつつ繋いで行く、という事でも結構です。
- 線状につなぐだけでなく、太く帯状にしてみたり、さらに広く身体いっぱいに拡げたり、という事もやってみてください。つながり、や、ひろがり の感覚の中で「部分の感覚」を受け取ることがポイントです。 広がったら、その味わいの中に浸ってください。
- 何度もやっていくうちに、「カタマリ」として全身から分離していた感覚が、他の場所の感覚とつながることで、徐々に融けつつ変質していくのが分かってくると思います。
- 時々深呼吸をしたり、からだを動かしたり 何か飲んだりしながらすすめるようにします。
快感覚をつなぐ
不快な感覚で 出来るようになったら、 快感覚 も、捕まえてみましょう。
気持ちよさもまた 多くを カワで感じ取っています。
キモチのいい風やぬいぐるみや布、木肌や土の触感を肌で感じたり、生きているものの温かみを(自分の手でもいいのですが)じっくり感じてみてください。
このような直接的な 皮膚感覚だけではなく、きれいな風景に出会って感動したときや、いい音楽、自然の音に出会ったときも からだが 反応しています。
これらの気持ちよさも 感覚スケッチしてみたり、皮膚を伝って引き伸ばしたり、広げたりして 遊んでみて下さい。