4.応用:かわの操体

動きのミックス

二つの動きを組み合わせることで、別の感覚に出会うことがあります。

上下の動きの感覚を調べて 上方向が キモチいいとします。

左右の動きの感覚を調べて 右方向が キモチいいとします。

別々にやればよいのですが、この二つの動きを組み合わせて同時にやろうとすると、また違うキモチよさが生まれます。

同時にやろうとするとき、二つのルートが考えられます。

動きのミックス:4.応用:かわの操体


1.上に動かしてから、右に動かす。
2.右に動かしてから、上に動かす。

どちらも、最終的に落ち着く手の位置は「右斜め上」なのですが、手を動かす順序(ルート)が違います。
そしてルートにが違うと、受け手の感覚もまた違うのです。

本人に感覚を訊いて確かめながら、よりキモチのいい ルート(道順)を探してください。

実際には、このように「方向の確かめ」をする事で、皮膚は影響を受けて変化しています。
キモチいい感覚に出会ったら、その手の位置から、ルート探しを続ける方が分かりやすい事もあります。

 

二ヶ所のカワを同時に動かす

「二ヶ所のカワ」を それぞれの場所でキモチのいい方向に動かすと、違うキモチよさや身体の動きが 引き出される事があります。

 

サンドイッチ

相手のからだを サンドイッチするように両手で挟んで、同時に動かすことができます。 動かす方向の組み合わせによっては、身体の動き が連動しやすいので、ついていけるように あらかじめ、体の位置を考慮してください。

サンドイッチ1:4.応用:かわの操体

 

サンドイッチ2:4.応用:かわの操体

図の例では、相手の 横から、胸と背中のカワを 左右に動かしています。
 

サンドイッチ3:4.応用:かわの操体

 

サンドイッチ4:4.応用:かわの操体


それぞれの場所で、上下左右の動きをミックスすると、さらに違う感覚や連動が生まれてきます。

 

関節を挟んだ二ヶ所の組合わせ

例: 腕の上二ヶ所のかわを同時にそれぞれのきもちいい方向に動かす

例: 手首のカワと指のカワを、同時に反対方向に動かす。

 

つまみあげ

症状のある周辺のカワを まんべんなく薄くつまんでみて下さい。 他よりも厚くなっていて、異常に痛いところや 鈍くて感じないところ、 あるいは、硬く貼り付いたようになっていて、指が滑ってつまめないところがあります。

そういう時は、カワをつまんだまま 指の体温で温めて下さい。
少しずつ軟らかくなってくるので、それに合わせて そっと「引きのばしていく」ように持ち上げてみてください。
「痛いけれども キモチがいい」という引っ張り方になります。

つまみあげ1:4.応用:かわの操体

 

つまみあげ2:4.応用:かわの操体

 

つまみあげ3:4.応用:かわの操体

 

つまみあげ4:4.応用:かわの操体


充分な軟らかさが出てきたら、つまみ上げながら引っ張る方向を変え、より気持ちよく感じられる方向を探してみてください。

真上に引っ張りあげるのが一番「いい感じ」という事もあります。

手のひらや指で「圧す」と、それがわずかな力であっても、不快な痛みを感じたり、痺れが出て来たり、気分が悪くなって来るような場所にも このやり方が使えます。

手を離してから後、しばらく、さらにカワが緩み続けますので、そのための時間を充分に取ってください。

 

つまむと痛い

指で、あちこちのカワを つまんでみてください。つまむ時の 厚みを いろいろと変えながらつまんでいると、異常に痛いところが 見つかることがあります。

痛みや不快感というのは、身体からやって来る大切な情報ですから、カワの操体をやるときの ガイド役として使うことが出来ます。 

この痛みをうまく使って、基本編で紹介した「動きの操体」につなぐ事が可能です。

痛みがわかる程度の軽さでつまんだままにして、本人が身体をいろいろと動かしてみると 痛みが増えたり、減ったりするのがわかるはずです。

 

つまむと痛い:4.応用:かわの操体


痛みが減るからだの動き がわかったら、いちばん 痛みの少ないところまで動いていって、後は、全身の力を抜けばいいのです。

これは、基本編にある「圧痛操法」の応用です。

つまんでみて、「とても痛い」ところがある場合に 引っ張る方向を変えるだけで 痛みが消えることもあります。

それも ひとつのやり方なのですが、ここでは、「離れたのところのカワ」を 動かす方法を紹介します。

皮膚を つまんだまま(痛みがわかる程度の軽さで)、あちこち 関係ありそうなところのカワを いろんな方向にズラせてみると「つまんでいる痛み」が軽減する動きが 見つかるはずです。

つまんでいる皮膚の痛みだけではなく、指圧したときの痛み(圧痛)や、筋肉の緊張、コリもまた、離れた部位のカワの操体で 同じように変化します。

たとえば 肩の外側のカワをつまむと とても痛いところがあるとしましょう。 このとき 色々と試してみて、みぞおちのカワを上(頭)方向に伸ばすようにズラせた状態なら 肩のカワを同じようにつまんでも、痛くなくなる とします。

 

つまむと痛い2:4.応用:かわの操体


こういうときは みぞおち に、上(頭)方向のカワの操体をやってみるといいでしょう。

みぞおちのカワの操体を やったあと、肩の部分のカワや筋肉が どう変化したか、本人が動かしてみたときの 感覚が変化したかどうか、姿勢がどう変わったかを 確かめてください。

そのときそのとき その人その人で 違いますので ここに書いたのは あくまで 一例にすぎませんが、このようにして 「どこのカワを操体するのか」を、身体に尋ねながら 探していくことが出来ます。

このやり方は、一方の手で痛みやコリを確かめつつ もう一方の手で別のところのカワをズラすという、二つの仕事を同時にやるわけですから、多少の練習は必要です。

 

推しこみ

「皮膚が 軟らかいところ」でしか使えません。

骨や腱、筋肉に 当たらないように、それらのスキマを探しながら 指を押し込んで行きます。

本人に感覚を聞きながら、いろいろな方向にズカワを伸ばしつつ、徐々に深部にもぐっていきます。

一直線には行かないので、くねくねと方向を変えながら、蟻の巣穴 に 潜り込んでいくような感じです。

 

感じること

意思疎通の難しい人、喋れない人(乳幼児や中枢性の神経障害の方)、動物たちを相手にやる場合は、呼吸や姿勢の変化、顔の表情、筋肉や皮膚の緊張の変化などの中に、「どう感じているのか」を読まなければなりませんが、相手を見ている自分の「からだ」は、存外賢く、さまざまな情報を勝手に取り込んでいるものです。

相手のからだがリラックスすれば、それに触れている自分のからだも リラックスします。
相手のからだが緊張すれば、それに触れている自分のからだも 緊張します。

「自分のからだを感じる」ことを通して、「相手がどのように感じているか」を ある程度 見定めることが出来るわけです。

相手に触れている自分の手を感じながら、自らの呼吸を観察してみてください。

あるいは、自分の手を感じながら意識的に深呼吸をしてみてください。

動かす方向によって、息が詰まるような感じがあったり、ラクに感じたりする事が わかってくると思います。

「不快な方向」に動かして 相手がキモチ悪いと感じているとき、自分の呼吸はどんな感じなのか。 「キモチいい方向」に動かしていて、相手がキモチいいと感じているとき  自分の身体は、どんな感じが生まれてくるのか、呼吸の感じはどうなのか。

観察して 見つけてみましょう。

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