2:かわの操体の実際

どこをやるか

まずはじめに

全身の左右対称の部位(場所)のカワを 左右同時に 手のひらや指で 軽く(痛くない程度)つかんで行って、左右の感触の違いを確かめます。
カワ(皮膚)の状態の左右差が 見えてきます。
本人にも感覚の違いを確認してもらいましょう。
始めに調べておけば、カワの操体をした後、どう変化したかを確かめることが出来ます。


はっきりとした問題(症状)があるとき 1

症状を感じている場所から 始めてみてください。
多くの場合、症状が移動して行くので、次々と追いかけて行きます。


はっきりとした問題(症状)があるとき 2

症状のある場所をやってみて あまり変化がない場合
症状を感じている場所から 遠く離れたところから行います。
上半身に症状があるときは 下半身から。
下半身に症状があるときは、上半身から。
頭や、手に問題があるときは 足から。
足に問題があるときは、頭や手から。
身体の中心に問題があるときは、末端(手足)から
背中に問題があれば おなかから、
おなかに問題があれば 背中から始める、という具合です。


症状がはっきりしない場合

操体の 動診をやってもらって、対称的な動きにアンパランスがある運動を見つけます。
「やりにくい動き」がみつかったら、その動きで 引っ張られたり 引き伸ばされたりする皮膚 は どの辺りか。と見当をつけ、その周辺のカワ(皮膚)を調べてみてください。
カワの表面に 軽く手を置き、軽く ふるわせるように揉んでみたり、軽くつまんでみると、「固い、動きにくい感触」 のある場所が見つかると思います。逆に、ぐにゃぐにゃになって動きすぎるカワも見つかるかもしれません。

プロのひとは

からだの形(歪)を見て、飛び出していたり、引っ込んでいたりする部位のカワや、筋肉の緊張の高いところ、強い圧痛のあるところ の周辺、あるいは 部分的に冷たいところ、皮膚の感覚の鈍っているところを見つけて 変化を確かめながらやってみて下さい。

カワを動かす

  1. 手(触れている場所)が 出来るだけ自分(操者)の身体の正面にあるようにします。

  2. 正面で扱えないときは、カワをズラす動きの延長線上に 自分の肘が載っているように 体の位置を工夫してみて下さい。

  3. 「動かす方向に 長細く」 触れるようにした方が、本人は感覚がわかり易いようです。手のひらや指の側面を上手に使って、触れ合っている面を 長細い形にしてみてください。

 

カワを使った動き(操体)の誘導と抵抗

カワをずらせる事で、その方向に身体が連動して動く という事をうまく使って、「動きの操体」に移行したり、 本人の動きに抵抗をかけたりするかたちが自然に生まれて来ます。

からだの動きへの連動

気持ちいい方向へ皮膚をずらせると、とりわけ手足や頭などからだの末端のカワを動かすとき、からだが 「ついて来る」かのように動く場合があります。
大きな動きが出るときは、手を持ち替えなければついていけないので、始めからそのつもりで手や身体の位置決めてください。

動きへの連動1:かわの操体

動きへの連動2:かわの操体


このとき、本人(操体をうけるひと)は、自分で動いているという意識はあまりなく、力を抜いて自然について行ってるだけです。

操者が慣れてくれば 操体の動き(動きの気持ちよさ)を引き出すことが出来るようになって来ますが、この連動は、「出なければ 効かない」というものではありません。動きを出そうとして力まないようにしてして下さい。

からだの動きへの抵抗
カワに連れられて動こうとするのに逆らって、固定しようとする(あるいは 反対方向に動かしていく)と さらに気持いい場合があります。

動きへの抵抗1:かわの操体

動きへの抵抗2:かわの操体


試してもらえばわかると思いますが、これは 動きの操体(ラクな方向に自分で動いて、操者がその動きに抵抗をかける)の 「力のタメ」のプロセスと ほとんど 同じ形になります。

「動きの操体」では、本人の動きに操者が抵抗を加えますが、この「抵抗」を カワだけに加えるようにするというバリエーションです。

どの場合も、一番気持ちいいと 感じるところで自然に動きが止まるので そのまま「いい感じ」に浸ってもらい、気持ちよさが消えてきたら終わりにします。

 

わからないとき

感覚が鈍くなって「キモチイイ・キモチヨクナイ」の違いが わかり難くなっている事があります。

かわ(皮膚)が固くなっていたり、分厚くなっていたり、貼りついたようになっていて、指でつまもうとしても 滑って持ち上げることが難しい状態です。
このような場合、鈍い部分を「保護する」ように、手のひらを はりつけていると感覚が回復してきます。
ふわっと手を置いて、そのまま自分の手から、積極性やヤル気を全て消し去ってしまうつもりで、どんどん力を抜いて、ただ、自分の手の表面の感覚を味わっていてください。

このようにして、カワ(皮膚)に「安心」してもらうようにすると 徐々に、緩みはじめます。

無理やりにつまんで 痛みを出しても、感覚は目覚めますが、下手に使うとケンカの元になるので あまり お奨めできません。

手を当ててある程度やわらかくなったら、カワを厚目につまんで 搗き立てのお餅をゆっくり伸ばしていくように持ち上げて行くと、だんだんと感覚(気持ちいい痛み)が出てきます。

鈍感になっているカワが広範囲にわたるときは、素早くさすったり、場合によっては強く(やけどをしない程度)擦る、というやり方でも 目覚めてきます。

 

すごくキモチがいいとき

「やたらと」気持ちよく感じる時は 注意が必要です。

少し感覚が狂っていると見ていいでしょう。

こういう場合は、たて続けにやるのを避け、一回、一回、全身の力を抜ききって深呼吸をしてもらうなど、充分な間を取りながら進めるほうがいいようです。

カワの操体 それ自体は軽い手技ですが、大きな動き(連動)を伴う場合は、結果としてかなり強い刺激になる場合があることを憶えておいて下さい。

 

意識的な動き

体のある部分の カワをずらせている最中に、身体の別のところに はじめはなかった不快感を感じて来るようなことがあります。
この場合、本人に身体を動かしてその不快感覚が消えるように逃げてもらうと全身のバランス調整につながります。

「不快感覚から逃げる」のは 普通の操体と同じですから、逃げ切ったところでしばらくラクな(あるいはキモチいい)感覚を味わい、その後、全身の力を抜いてください。

 

無意識的な動き

  1. ほとんど触れているだけなのに、微妙に勝手にからだが動くことがあります。
    人によっては連続的な大きな動きが起きる場合もあります。
    これは身体の要求に身体自身が応じて 自らバランスを整えようという反応のようで、要求が満たされれば自然に終息しますので怖がらないで 眺めていて下さい。

  2. カワの操体の合間や、後に、シアワセな気分の中から湧きだしてくるような「のび」が起きることがあります。

 

こころへの影響

かわの操体を受けていると、いわゆる トランス(変性意識状態)という状態に 入りやすい傾向があるようです。
これは 暗示を受け入れやすい状態で、ちょっとした顔つきや、たったヒトコトのコトバで 心身が誘導されてしまいます。

言う方は 怖がらせたり、脅したりするつもりは 毛頭なくても 聞くひと次第で 脅されたように受け取ってしまうことは 多いのです。

「事実=感覚」を確かめあうためのコトバ は全く問題ないのですが、「説明=解釈」が絡んでくる場合には、注意が必要です。

自分の発する言葉や声を 自分の耳で しっかりと聞きながら 話すようにしてください。

 

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