第3回東京操体フォーラム ディスカッション  レポート:soutai虫


Q:好転反応について
(イタリアンな夕食を頂き遅れて入ったらこの場面でした)

鹿島田先生
操体でもなんでも、治療をやっていて治る過程において色々なことがおきますが、重症な場合のほうが起き易いと思います。
好転反応なのか、病状の悪化あるいは副作用なのかどうなのかですが、私の判定の仕方としては、

 爽快感がある・気分が良い・食欲がある。
 気持ちよいだるさがある。
 夜ぐっすり眠れる。
 朝起きたときに爽快感がある。

等は好転反応と思っています。
逆に、

 寝つきが悪くなる。
 食欲が落ちる。
 痛みに対して悲観的になる。

等は、病状の悪化か副作用と思っています。
好転反応については、いまのところ文献は見当たりませんが、現象としてあるので、それは上述したとおりです。

Q:気持ち良さを感じた場合は好転反応が出ないと思いますがどうなんでしょうか。

三浦先生
楽を通すか、快を通すか、回数を決めたりは、快が通っているのかで決めれば良いのではないか?
こちら側で回数や操法を決めるのではなく、相手が求めているか(もっとやりたい・試されたい等)聞く事でやりすぎはなくなると思う。

Q:操体+鍼灸でやっていますが、慢性疾患で来られる方が1〜3ヶ月通ったところで風邪をひいてショック(こんなによくなって来ているのに…)を受けられる方がいいます。また、風邪をひいた後は以前と比べてすっきりとしていたり、体に張りは見られないといったことを経験していますが好転反応ではないかと思っていますがどうなんでしょうか。

瓜生先生
私のところはシビアな人が多く、やり過ぎないようにやり過ぎないようにしてやっていますが、訴えがあったときは好転反応と決めつけずにやっています。
慎重にやれば好転反応がでないですむと思っています。

三浦先生
私もそう感じています。

畠山先生
私は風邪をひいてしまったというよりも、気持ちよく寝てしまったあるいは、眠くなって寝てしまってそういうことが通り過ぎていく?。
風邪ひきはあるのかもしれませんがわかりません。

石井先生
好転反応が出やすい人と出にくい人があると思う重症の方によっては出方が違うと思う。
早めに痛みが出て治っていく場合や、慢性疾患の人が風邪・下痢等で良くなっていく。
(好転反応)出る出ないは、体の免疫系の働きによってでるものである。
これを操法上見極められるか、られないかだと思う。

三浦先生
操体の臨床を30数年やっていますが、最近操法をやっている時に、吐き気がする と言った人がいました。
僕は気持ちが悪くて吐き気が出たんだと思っていましたが、ただ単に、吐きたいだけ。
吐きたいだけ吐かせて十分吐いたら、気持ちよくなり余計に快を感じやすく,そして通りやすい体に変わってしまった。
こんなことは始めての経験でした。
やっぱり、僕自身としては、快適感覚を患者に聞き分け、そして味わうを通して行う場合は体が要求・調整してでてくるものなので、体が要求していないことをするとそういう反応が出てくると思うので、体での聞き分けを年中聞く。
感覚の領域を操者の方でプログラムしてはいけないと思っています。

青木先生
操法が思いより行き過ぎ・通り過ぎたことがあります。
くらくらするとのことで、15分くらい横になったら良くなりましたが、その時は余計な想念があったように思います。

三浦先生
患者さんの中で気持ち良さを聞かなくても、必ず気持ち良さに反応することがある。
涙を流すとか、あくびが出るとか(あごがはずれるほどの大きなあくび)。
気持ち悪いときや気持ち良さがあまり無いときはあまり口が開かない。
これは、体の無意識の反応で気持ち良さが通っていると見れる。
体全体を見ることが必要なんです。
操体では、連動というものがある。
治療家を見るとあいまいな部分があるのではないかと思う。
「連動=局所の動きから全体が動く」と思っている人が多い。

青木先生
操法の過程によって患者さんが動く、というのではなくて、頭を切り替えましょう。
操体を知っている人は、人の体の構造と連動をしっています。
これは逆にいうと、ごく普通に立っている人を簡単に崩せるということなんです。
くずされると気持ちが良いんです。
崩れるポイントは体全身にあります。
体の構造にあった(かなった)操法は気持ちが良いんです。

鹿島田先生
連動については私の場合はあまり追求していません。
高齢者や素人には難しく、動きすぎることや、時間が無いこともあります。
だから、連動にこだわらずにやろうと思っています。

三浦先生
鹿島田先生が言ったように操者は知らなくてはいけないものです。
操者は患者さんを動かすものなので知らなければならないもので、実際に連動すると言うことを知ることは体の表現をすることだから…うごきすぎることとか、やりすぎは無いと思う。

連動は般若心経の中の、重心系移動の法則が連動の基本なんだと思う。
連動を知らないと・掴まないと言葉の誘導があいまいになる。
僕は、重心移動の法則を柱にしてやっていますが、人体構造の主関節と側関節には基本的に8つの動きがあることは知っての通りです(+圧縮・伸長)。
この、部分と全体の連動は是非とも学習してもらいたいと思う。
こうゆうことを知ることで、言葉の誘導が正確になる。 
患者はゆがんだ体でやってきます。
ゆがんでいると言うことは、ゆがんだ連動を持ってくるということです。

なにがニセ物で、なにが正常な連動性なのか見分けることができるネ。
動診学はあっても連動学が無いので、連動学があってもいいと思っている。
そういう意味で操体は、まだ研究段階にあり伴に研究して構築していく部分があると思っている。
型に当てはめずに、こうだと決め付けずにいたほうがいい。

今先生
感覚を追うと、連動がごちゃごちゃになる場合があります。
そうですね、膝倒しを例にしましょう。
倒したほうに快・不快がある場合は皆さんどちらに倒します?
そうですね、快のほうにたおしますね。

最初に首の動診をして、首はひだりまわりが気持ちいいというと、膝倒しの場合止める位置が変わります。
止める位置が行き過ぎると、首は逆方向に動かざるをえなくなります。
そうゆうときもありますので、いろいろ野次馬してみてください。

三浦先生
僕が言っている連動は、動診の中で連動を見なさいといっていることです。

畠山先生
先週、武道をやっている女性の方で師範から、手と足のバランスが悪いと言われた。と相談がありました。
診察時、仰向けに寝てもらい、左手を伸ばさせました。
このときの正常な連動としては左足踵が伸びてくるはずなのに、彼女は右足が伸びてきました。
普通と逆ですよね。
これは、あきらかにユガミがある証拠です。
腰のところで連動が切れているか、首か腰にユガミがある証拠です。 
ついでに誘導について言うと、体の使い方がうまい人は何も言わなくとも出来ますが、そのうまくできることを言葉に表せないんです。
長島監督なんかがそうなんです。
(誘導時の)言葉もみがきましょう。
知識も仕入れましょう。

Q:気持ち良さの追求・皮膚感覚の追及をどのようにしているか教えてください。

三浦先生
今後フォーラムの中でやって行きたいと思っています。
僕自身は危機管理的なイメージで、動けない人や感覚が無い人が来たらどうしようと常々考えていましたし、そのような人が来たらパニックになるのではないかと思っていました。
そんな時、あぁ〜橋本先生は運動系の定義を骨と筋肉とともに動く皮膚がある。と言っていたのを思い出し、皮膚に問いかけてみようと思いました。
動けない人、感覚が無い人というのは、ぎっくり腰、寝違え、鞭打ちなど炎症を伴い痛くて動きを停止してしまっている状況です。

こうゆう時に皮膚に問いかけたんだよ。
でね、体に動くときの快適感覚を身につけていない場合でも、皮膚に快適感覚があるのを見つけたんだよ。
皮膚を8つの方向に動かしてみると気持ちのイイ方向があることが分かった。
僕自身、面白いな皮膚の野郎はと思っている。
皮膚と脳の関係を僕自身の考えだが、皮膚は外部刺激をモロに受けているし、内蔵からの刺激もモロに受けている。
皮膚は内・外の刺激を一番良く知っていると思う。
逆に言うと、体に対する情報については脳が持つ情報と同じものを持っていると考えている。
だから皮膚を外す訳にはいかないと思っている。

錐体路系と錐体外路系という言葉を知っていると思いますが、
 錐体路系……随意筋(横紋筋・骨格筋)  
 錐体外路系…不随意筋(平滑筋・内臓を支える筋) 
楽な動きは錐体路系で、気持ち良さは錐体外路系からくるもので、楽で気持ちよければ外部と内部のバランスが取れるということです。
皮膚に問いかけた快感覚は骨格系と違い、別の気持ち良さ、異質の気持ち良さが存在します。
皮膚へのアプローチも忘れないでください。

Q:横紋筋系の快と皮膚での気持ち良さですが、皮膚の方が、意識と結びついているように感じていますがどうなんでしょうか。(今先生)

三浦先生
錐体外路系では意識飛びがある。
たとえば、ころっと無意識あるいは眠りに入る。
眠りに入るだけではなく、意識ははっきりしていながら体が深い眠りに入る。
このため、会話もできれば、周りの状況も把握できている。
皮膚に快を通すと、無意識の動きが出ることがある。
笑い出す・涙が出る・あくびが出る・光を見る・色を見ることもある。
心身症の患者に有効であると思っている。
     
Q:ポイントがあれば、1箇所・2箇所・3箇所4・・・教えてください。(今先生)

三浦先生
今までは一番動くところを診ていた。
動いていないところ、胸郭・頭部を忘れている。
動かないところは盲点となっているので是非試して欲しい。

青木先生
私は触診においては胸郭は外せない部分です。
というのも、人は皆生まれて動き出すとき・ハイハイを しますが、このときに胸郭を使います。
その人の(患者さん)原始感覚を求めるのであれば、 赤ちゃんの時代までさかのぼってみる。
場合によっては、おなかの中にいるときまで遡ることが必要です。
米国だったかどこだったか忘れましたが、残酷な実験が行われました。
暗いところで育てたり、一人でほっといたりと、この中で一番死亡率(育つことが無かった)が高かったのがスキンシップが無かった子供です。

皮膚へのアプローチは値段の高い茶碗と思って接しています。
皮膚1枚へのアプローチです。
ぎっくり腰などで来る患者さんは、仕事に追われ治ることを期待してやって来ます。
こんなときには、何も出来ないのですが、皮膚に触れて、心で操法しているようなものです。

鹿島田先生
皮膚の快感覚は、本能的な感覚なのか・温度的な感覚なの か・電気的な感覚なのか良く分かっていませんが、橋本先生は、おかしい所があると触れれば分かるとおっしゃてました。
見ただけでも分かるともいい、プロは触れたら分かるまでいかないとダメだといっていたのを思い出します。

Q:皮膚に触れていて患者さんの快感覚が変わると操者の感覚も患者さんと一緒に変化するものなのでしょうか?

三浦先生
動きの操体法でも、皮膚への問いかけでも同じです。
皮膚操体をやっていて、そばに第3者がいるとすれば、その第3者までもが気持ちよくなります。

瓜生先生
頭骸骨仙骨療法というものがありますが、頭に手を当てているだけで大きなうねりが来ます。
もう、相手が生の土壇場でこうゆう状況になると、自然とこちらも激励されているような感じとなり、何となく応援する声がでます。
また、このような状態から少しづつ、元気になってくる人もいます。
だから、皮膚は馬鹿にできません。

三浦先生
皮膚の動かす範囲は、ほんの1ミリ程度だよ。
八方塞の場合でも皮膚に問いかけはできるんだよ。
ボディーの外側を包んでいる皮膚をないがしろにしてはいけないんだよ。

皮膚は命を包み込んでいるんだよ。

 

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